辻占(つじうら)

2024.11.04

磨墨ライカ先生

磨墨ライカ先生

遊びをせんとや 生まれけむ
戯れせんとや 生まれけむ
遊ぶ子供の 声聞けば
我が身さえこそ 揺るがるれ

躍動感があって、言霊的にもよいので、この歌が十代の頃から好きでした。歌集『梁塵秘抄』に収められています。

『梁塵秘抄』という書名は「梁(はり)と塵(ちり)」の組み合わせでできています。その由来がずっと謎でした。なぜ梁(はり)と塵(ちり)なのか?

先日、ふと思い立ってGoogleに聞いてみることにしました。あっという間にAIが答えてくれました。曰く、「中国古代の美声の持ち主である虞公(ぐこう)と韓娥(かんが)が歌うと、その響きで梁(はり)の上の塵(ちり)が舞い上がり、三日も止まらなかったという故事にちなんでいます」。なんともファンタスティックな由来です。

『梁塵秘抄』は、1170年ごろに後白河法皇が編纂した歌謡集です。私は前世のどこかで、『梁塵秘抄』に収められる前のこの歌を歌いながら、辻占をしていたのではないかと思うことがあります。

【辻占(つじうら)】というのは、道の辻に立って、通りがかりの人の言葉を聞いて吉凶を判断する占いです。十代の前半に、私はかなり無意識にこれを行っていました。通りがかりの人の言葉ですから、ほんの断片的にしか耳に入ってきません。例えば「~だから、やめたのよ」とか、「青かったらね」とか、誰が言ったのかもわからない言葉を拾って、自分が占いたい物事に当てはめていました。

本来であれば道の辻に立つべきなのでしょうけれど、「知りたいな」と思ったときに、耳に入ってきた言葉を大事にしていましたので、道の辻に立ったことは、ほとんどありません。それでも意外と当たるのです、これが。面白いですよ。

辻占は【朝占夕占(あさけゆうけ)】とも呼ばれます。朝方や夕方の、人の姿がはっきりしない時刻に行い、道行く人が無意識に発する言葉の中から神慮を感じ取り、それを啓示としたためです。無意識の力を利用したわけですね。『万葉集』にも辻占を行ったと思われる歌が登場しますので、起源はそうとう古いのでしょう。

「辻」は、神仏や妖怪など、善悪さまざまな霊的存在の出現する境界的な場所であると言われています。そこに昼と夜の間(あわい)の時間に立つことは、あの世と接点を持ち、霊界と交流することを意味します。だからこそ占いが成立するのでしょうね。

最後に、この辻占の実践例を『万葉集』から2つご紹介したいと思います。

◎言霊の 八十のちまたに 夕占問ふ 占まさに告る 妹は相寄らむ(巻11-2506)
【現代語訳】
言霊が動き回る八十の交差点に立ち、夕占(ゆうけ)をした。その占いは、はっきりと告げた。「あなたが恋する女性は、あなたに必ず好意を示すでしょう」と。

◎玉鉾の 道行き占に 占なへば 妹は逢はむと われに告りつる(巻11-2507)
【現代語訳】
道を行く人の言葉から占ってみました。「あなたは必ず逢いに来てくれる」という答えが出ました。

簡単ですので、ぜひ一度お試しくださいませ。その結果が判断できないときは、不肖・磨墨ライカがお手伝いをさせていただきます。どうぞお話しください。お待ちしております。
磨墨ライカ先生のブログ一覧 全ブログ一覧